パーソナルトレーナーは主治医です。

パーソナルトレーナーは主治医です。

ストレッチの素晴らしさをもっとたくさんの人に知ってほしい―――

Dr.stretchはそんな願いを常に持ち続けています。

そこで、各界の有識者の皆さんに「ストレッチの有用性」について語っていただくこの企画。第1回目は最近不妊治療「こうのとりシステム」で数多くの実績を上げている話題の体外受精クリニック、医療法人社団鳳凰会 フェニックス メディカル クリニックの賀来宗明理事長・院長先生に、お話をうかがいました。また、フェニックス メディカル クリニックは年間癌症例を約200名近くも発現する日本有数の健診センターでもあります。


――今日はストレッチの重要性について、お医者様としてのお立場からお話をいただきたいのですが

賀来:はい、最初に断っておきますが、私はドクターストレッチの回し者ではありません(笑)

ただ、社長の黒川さんを始めスタッフの方とお知り合いになる機会があって、その時に皆さんのストレッチに対する真摯な姿勢を知りました。実は私の方でも、そういう組織に出会えるチャンスを待望していたんです。

 当たり前の話ですが、人間は時間の経過とともに歳を取ります。いま2021年ですが、2030年になるとどういうことが起きるのかというと、女性の平均寿命が90歳を超える。男性は平均86歳に到達します。つまり日本の人口の約半数が、そうした年代に入ってくるわけです。みんなが長生きになるのは素晴らしいことですが、ここで問題になってくるのが“健康寿命”の問題。ずっと寝たきりや入院状態で最期を迎えるのではなく、美しく歳を取りながら、健康なまま最期を迎えるのが理想なんです。ただ避けられないのは「老化」という現象。人間は何歳から老化が始まるのかというと、個人差はありますが大体5歳くらいから始まる。ある程度の年齢になるとそれが難聴や老眼になったり、ふらつきがあったりといった症状となって顕在化してくるんです。

 私もそうですけど、仕事をしている人って姿勢が良くないことが多い。医者なら診察、手術、パソコンに向かったデスクワーク、スマホも操作します。すると、誰もが仕事や作業に集中することで起こりうることなのですが、張っていた肩がどんどん前に出て行って猫背のような形になってしまうんです。人は幼児や小学生の頃までは、みんな胸を張った正しい姿勢を保っているんですよ。オードリーの春日さんみたいにね。でも、肩が前に出てしまう形になることで、背中の肩甲骨が開いてしまうんです。理屈で考えると、肩甲骨が開くと頸椎から腰椎までの背骨が後方にズレてしまうことになります。そして同じ姿勢を何時間も続けていると背中痛、腰痛になるわけです。腰痛は骨だけの問題ではなく、つなぎ目の椎間板も影響する。椎間板は加齢と共に水分が無くなってきて、固く変性していくんです。柔軟性が無くなっているから潰れやすい。するとその椎間板は後ろに滑っていく。人間の脊髄は脳から頸椎~胸椎~腰椎の順で下りてきます。骨の裏側にある脊椎神経に、ズレた椎間板が当たってしまうと痛くなるんですね。

 さて、こうした状況をどうすれば解決できるのでしょうか? 一度ズレた骨を元に戻すのは難しい。マッサージや鍼灸といった日本古来のやり方も全く無意味ではありませんが、長期的な視点では解決にはならない。薬を飲んでも、神経に当たっている骨を治療できるわけでもないし、湿布も患部まで届かない。結局、表層の筋肉へのアプローチだけでは、根本的な解決は難しいのです。施術者の腕によっては、気持ち良く感じることもありますが、数日後にはまた痛くなるの繰り返しではないでしょうか。

 自覚できる“凝り”って放っておくことができます。我慢できるんですね。でもそれが長期間に及ぶと筋肉が固まってしまいます。よく「○○さ~ん」って呼びかけると、首を回して呼びかけた方を向くのではなく、身体ごと振り向く人っていますよね。あれは、筋肉全体が固まってしまっているから。おそらく“凝り”を放置しておくと、これを元に戻すのは難しくなると思います。 さて、一度ズレてしまった骨や椎間板、固定されてしまった筋肉を元に戻すのはかなり難しいということが解ったと思います。じゃあ、どうやって対処していくのがいいのかというと、それが「靭帯」「関節」そして「深層筋」なんです。

日本の医療現場ではいま、産婦人科や小児科、そして整形外科の医者が非常に少なくなっています。肩が痛い、腰が痛いということで皆さんは整形外科に行かれると思いますが、整形外科の医者も骨折とか靭帯が切れたといった具体的な症例ではなく、手術のしようがない症例ではあまり治療のやりようがない。昔なら「それは加齢が原因」で済まされていたかもしれませんが、最近ではストレッチの重要性を認識した医者も増えてきて、具体的なストレッチの方法や、運動、生活習慣の改善法などをアドバイスしてくれるようになってきました。「歳だから」とか「加齢によるものだから」という日本語、考えてみれば救いようがない。だって「諦めろ」と言ってるのと同じことですから。

 今日こういう機会を頂いて申し上げたいのは、高齢化が進み、3人に1人は高齢者という社会の中で、老後になって子供や孫の世話になるのではなく、寿命を終えるそのときまでは自分の口でものを食べ、自分で排泄し、自分の意志で動き、ものを考えたりして、なるべくボケないでい続けることが理想だということです。キレイにカッコよく歳を取って、キレイに命を閉じる。というのが目指すべき生き方だと思います。総論としてはそういう考え方です。


私はマッサージや鍼灸を否定しているわけではありません。中にはきっと“神の手”を持った方もいることでしょう。実際にその治療で快癒したという患者さんもいらっしゃるはず。ただ、私が着目するのは対処療法ではなく『継続』なんです。

 20年ほど前、ストレッチという存在を知りました。ただ、そのとき興味深く感じたのはその方法論だけではなく、トレーナーの存在なんです。自分自身でやるストレッチはやらないよりはやったほうが絶対いいと思います。というかやるべし、です。ストレッチという学問はある意味、ヨガをずっと進化させたようなもの。どちらかといえばタイの古式マッサージに近い部分がある。お金が余ってどうしようもない人(笑)ならタイの古式マッサージに通えるだろうけど、音楽流れてお香焚いてリラックスできますしね。タイの古式マッサージは現代的なストレッチにかなり近い部分がある施術を行っています。関節や靭帯を伸ばすことに主眼が置かれて、揉んでいるわけではない。しかしそれもある一定の部分までで、それより深い伸ばしにはなっていないんです。おそらく深層筋には届いてないと思います。でも普通のマッサージよりは効果がある。

 ストレッチという学問は、トレーナーの補助によって行うことに主眼が置かれています。経験のあるトレーナーの手を通して、筋肉の質、関節の可動域や深層筋の状態などを知ることができる。不調を訴える原因が首なのか、肩なのか、腰なのか、背中なのかを探れるのです。しかもそれを継続して行うことで、原因の究明につながり、より効果的な治療が行えます。ドクターストレッチのように、その店舗にいけば自分の身体のことを解ってくれているトレーナーがいるというのは心強いこと。つまり、『パーソナルトレーナー』がいるということは、これからの健康寿命を考えて行く上でとても大切な価値観になっていくと思います。自分との相性がいいトレーナーを見つけ、その人の施術を一週間、二週間に1回でもいいから定期的に受け、現状をチェックしてもらうことを習慣化することです。おそらく、これを続けていくことが、これからの人生の中で一番お金がかからない健康法になることでしょう。 

 人の手を借りたストレッチを続けるのはなかなか大変、と思っている方も多いと思いますが、パーソナルトレーナーがいることで、自分の身体、筋肉や関節、腱の状態を把握してもらえます。でもそれだけではないんです。トレーナーとの会話の中で、日常生活におけるストレッチの方法をアドバイスしてもらえる利点もあるのです。たとえばストレッチベルトや、ボールやポールを使ったストレッチ法など、正しい方法論を自分で覚えていく近道でもあるのです。新幹線や飛行機などでの長距離移動の際、ゴムのボールを背中に当てておくだけで、疲れ方は全然違ってくると思いますよ。ホテルのベッドでも、ボールを使ってストレッチする意識、習慣を育てる。

これ、われわれの医療の世界でいうところの“主治医”と同じです。主治医は患者の健康状態、バックグラウンド、仕事の内容、遺伝子、家族構成、過去の既往症まで把握しています。急な病気や怪我で出会う病院のお医者さんはおそらくほとんどが初対面で、“点”の接点しかありませんが、主治医はその患者と“線”で付き合っている。実はこうした関係性が医療の基本なんですね。ですからパーソナルトレーナーは主治医と同じなんですよ。

 いい医者、いいトレーナーに共通するのは「想像力」。この患者さんが2年後3年後にどうなるかのイメージを頭に描けると、その人にとって一番いい治療が施せることになります。人生のロードマップみたいなものですね。自分には主治医もいなければ、パーソナルトレーナもいないという人は、いまからでも遅くないから、ストレッチのパーソナルトレーナーを選ぶことをお勧めします。いまのうちに少しでも機能を取り戻したり、少しでも強化できれば健康維持には大いに役立つことでしょう。


医者の立場から言わせてもらえば、頸椎と腰椎。頸椎がズレた場合は指が痺れたり、モノが持てなくなったりする。腰椎がズレると下肢に痺れが来て、立ち上がるときや歩行が困難になります。このズレた状態をあまりにも長期間放置し続けると、元に戻すのは大変なんです。ですから自分の身体に凝りとか張りが出た場合は、早めにストレッチしてほしいと思います。ドクターストレッチに限らず、こうしたストレッチという学問があることを皆さんには知っていただきたいですし、こういう発信で啓蒙していくことは大切なことだと思います。金額的な面で考えても、将来病院にかかる費用を考えたら、定期的なストレッチに通うことはずっと経済的です。

 ただ、ドクターストレッチのトレーナーさんも、クライアントの身体を触りながら「ん?」と思うこともあるでしょう。とてもじゃないけど、これはストレッチでは戻せない、手に負えないと感じた時は、病院で画像による精査や、外科的な処置を行うよう誘導して頂ければと思います。外科手術そのものも昔とは異なり、内視鏡を使った処置で、短時間のうちに退院できるようになってきています。飛び出た椎間板ヘルニアなどは、レーザーで治療する方法などもあって進化しています。

日本という国は戦後75年で平均寿命を飛躍的に伸ばしてきました。その理由は衛生と医療の発達。ただ、これから国民の平均年齢がさらに上がってくる一方で、人口はどんどん減ってきている。2100年には、日本の総人口4000万人という計算もあります。これ、明治初期と同じくらいの水準です。だから、国を維持していくためには少子化の対策が急務であるし、海外移民の受け入れと同時に、高齢者にももっと元気で働いてもらわなくてはならない社会になる。労働人口確保のために、高齢者も現役は引退できない。ということは、腰が痛い高齢者なんか作っちゃいけないんです。整形外科医でもない、一介の医者の視点ではありますが。

――最近、注目度が高まっているフレイル予防にも通じる考え方ですね

賀来:はい、ストレッチは予防医療です。しかも理論があります。ある意味“積極的に歳を取ろう”ということですね。ストレッチも高度なものになると、アスリートのためのプロの理論も存在します。野球やサッカーでも、ストレッチは一般的な予防医療として実践されています。

――先生、ストレッチはメンタルにはどう効くとお考えですか?

賀来:ストレッチが一番いいのは、筋トレのためにただジムに通っているとか、誰か来て肩や腰などを揉んでくれるとかと違い、その良さを理解したら自分でやり続けられる。先ほども話した「継続」とはそういう意味も含まれます。また、コロナ禍を経験して、社会はもう変革期に入ったことを皆さん感じていると思います。アフターコロナは、コロナ前とは同じにはならない。働き方ひとつとっても、リモートワークが増え、誰もがオフィスへ通勤するスタイルというわけではなくなります。そういう状況下でストレッチはとても身近な存在になっていくことでしょう。ストレッチが終わった後に気分が悪くなった、なんて話はあまり聞いたことがありません。ストレッチ後の爽快感はメンタルにいい影響を及ぼすはずです。

人間のコアの部分を鍛えるストレッチの重要性は、これからもっと広まっていくべきです。温泉もいいけど、薬や湿布などに頼らずに深層筋を鍛え、関節や靭帯を最適な状態で伸ばし続けるストレッチを続けて欲しいと思います。余談ですが、日本という国は体育大学出身の人材が豊富です。ということは、優秀なトレーナーの予備軍がたくさんいる社会だといえるでしょう。ストレッチで体調を整えてあげるのは人助けでもあります。人を救うのは医者と看護婦だけではないのです。


賀来宗明先生

現職:医療法人社団鳳凰会フェニックス メディカル クリニック理事長・院長/東京大学医学博士/東京大学医学部産婦人科非常勤講師/帝京大学医学部非常勤講師/台北医学大学産婦人科助教授/実践大学民生学院教授

→院長のご紹介(https://phoenix.gr.jp/clinic/director/)

正しいストレッチ方法は「プロ」に頼ってみよう

Dr.stretchではお客様一人一人のお身体の状態に合わせたストレッチを提供しています。自己判断ではなく、プロのコアバランスストレッチトレーナーがあなたのお体をチェックし不調の原因や正しいケアの方法、またはお客様にあったセルフストレッチの提案などもサポートさせていただいてますので、是非気になる方がいましたら一度足を運んでみてください。ストレッチを習慣化させて辛くならないお身体を一緒に作っていきましょう。

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