産後の骨盤周りの痛みなどに効果的なセルフストレッチをご紹介

産後の骨盤周りの痛みなどに効果的なセルフストレッチをご紹介

出産を終え、可愛い赤ちゃんと新たな生活をスタートさせている中、骨盤周りに痛みが出てきてしまい、辛い日々を過ごしている人も多いのではないでしょうか。産後は、妊娠前の体に戻ろうと、急速に体が変化していきます。しかし、赤ちゃんのお世話や悪い姿勢の影響が優ってしまい、なかなか痛みが無い状態にまで戻りきらないという人もいると思います。今回の記事では、産後の体の不調が起きてしまう原因や、産後によくある腰痛、おすすめのセルフストレッチなどについて解説していきます。

なぜ、産後に体の不調が起こりやすいのか?

産後うつ

産後うつとは、出産をきっかけとして、うつ症状になってしまうものです。

産後うつには、ホルモンが影響していると言われています。出産により、性ホルモンであるプロゲステロンが、急激に低下します。これが、産後うつの原因と言われています。産後うつを呈した人は、妊娠中期〜出産直後にかけてのプロゲステロンの低下率が大きいと言われています。また、臍帯血中のプロゲステロン濃度が高いこともわかっています。これらのことから、プロゲステロンというホルモンが産後うつと関連がある可能性が指摘されています。

産後うつは、心に影響を与えるだけでなく、活動的でなくなってしまい、体力が低下したり、うつ症状自体が腰痛の原因になったりします。

体力の低下

出産後は妊娠中のつわりなどで、体力が落ちた状態で赤ちゃんのお世話がスタートします。新生児は3kgほどとはいえ、スクスクと育つ赤ちゃんは、あっという間に大きくなってしまいます。徐々に重たくなってくる赤ちゃんを抱っこしたり、中腰姿勢になってしまうバウンサー等を使用していたり、体に負担がかかる育児場面は多いと言えます。床から赤ちゃんを持ち上げて抱っこすることもあると思いますが、この動作を繰り返すのは、想像しただけでも大変なことがわかります。

同じ姿勢での授乳・だっこ

育児経験がある方はわかると思いますが、人により赤ちゃんを抱きやすい姿勢はある程度決まっていて、つい同じ姿勢を続けがちになってしまうと思います。同じ姿勢で体に負荷がかかり続けると、特定の筋肉ばかりを使用するようになり、負荷のかかっている筋肉は硬くなってしまいます。すると、筋肉の血流が悪くなり、痛みにつながります。

同じ姿勢の授乳や抱っこだけでなく、胎盤から分泌されるホルモンの影響で胸も発達するため、胸の重たさの影響で悪い姿勢になりやすいと言えます。胸の重さは、妊娠前の3〜4倍になると言われているため、巻き肩になったり、猫背になったりするリスクは高くなっていると言えます。

悪い姿勢が続くと、全身をうまく使うことができずに、特定の場所に負担がかかってしまいます。これが、腰痛などの原因になります。

夜間のミルクや夜泣きなど、不規則な生活が続く

出産後、最初に大変な思いをするのが、授乳だと思います。出産でボロボロになった体で、少しでも長く睡眠をとりたいのに、それを赤ちゃんは許してくれません。数時間置きに授乳をして、ゲップをさせて、おむつを替えて、汚れてしまったら着替えさせてと、ゆっくり寝ていることすらできません。最初は、赤ちゃんに出会えた喜びが優って頑張れるかもしれませんが、1週間もすると疲れ切ってしまうと思います。このような生活が続いてしまうと、睡眠不足から自律神経が乱れてしまいます。また、睡眠不足以外にも、ホルモンの影響もあり、産後は自律神経が乱れやすいです。自律神経が乱れてしまうと、めまいや頭痛など、体調を崩してしまうため、注意が必要です。

産後によくある腰痛の種類をご紹介

筋筋膜性腰痛

同じ姿勢で抱っこや授乳が続いた時に、出てくる腰痛です。筋肉の血流低下が主な原因で、筋肉に持続的に力が入っていたり、伸ばされるストレスが続いたりする時に、痛みが出現してきます。筋肉自体が痛みの原因のため、ストレッチをしたり、温めたりして血流を改善することにより、痛みが取れる可能性があります。しかし、姿勢や筋肉のバランスが崩れており、それらが原因で腰の筋肉に負担がかかっている場合は、姿勢の修正をしたり、筋肉を鍛え直さないと根本的な原因を改善することができません。

産後うつによる腰痛

産後にホルモンの影響などで、うつになりやすいことは解説してきました。この「うつ」は、腰痛とも深く関連していると言われています。うつ症状があると、脳の神経伝達物質が、適切に分泌されなくなってしまう場合があります。

通常の状態であれば、痛みが生じると、痛みを遮断する神経伝達物質が放出され、痛みを脳に伝わりにくくしてくれる作用があります。しかし、「うつ」になってしまうと、痛みを遮断する脳の神経伝達物質が、出にくくなってしまいます。そのため、ストレスをため込んでいたり、「うつ」になっていたりすると、痛みを感じやすくなります。その結果、慢性的な腰痛を感じやすくなってしまいます。

「うつ」が原因と思われる腰痛の場合は、心の問題を解決する必要があります。整形外科的な治療を行っていても、なかなか効果が発揮されない可能性もあります。

痛み止めにもいろいろな作用を持つものがあるため、担当の医師に相談して、薬の調整をしてもらっても良いかもしれません。

産後、いつからストレッチを始めて良いのか

産後のストレッチは、いつから始めて良いのでしょうか?ポイントは、産褥期を抜けたかどうかです。妊娠中は、ホルモンの影響で、筋肉や靭帯は柔らかい状態になっていました。筋肉の硬さが元に戻ってきたら、体の調子を見ながらストレッチを開始しても良いでしょう。

出産後は、早く妊娠前の体の状態に戻ろうとします。この期間を産褥期と言い、妊娠前の状態に戻るまでの期間としては、6〜8週間必要と言われています。この期間で、ホルモンのバランスや子宮の状態が妊娠前の状態に戻っていきます。

妊娠中にはリラキシンというホルモンの影響により、筋肉や靭帯が柔らかい状態になっていました。産後にはオキシトシンというホルモンが分泌され、筋肉や靭帯の硬さは急速に回復していきます。母乳で育てているのか、ミルクだけで育てるのかによっても、筋肉や靭帯の硬さの回復には差はあるようです。

これらのことから、ストレッチを開始するのは出産後6〜8週間ほど経過してからの方が、安全性が高いと言うことができます。

ストレッチとは別に、産褥体操と言うものあります。これは軽い筋トレ的な要素があり、出産後のお腹周りや骨盤周りの筋肉の回復を助け、血流を良くし、血液の塊ができてしまうことを防ぐ役割があります。出産後からできる軽めの運動ばかりなので、体が回復するまでの期間は、産褥体操をして体の回復を待つ方が良いでしょう。

おすすめのセルフストレッチをご紹介

ここからは産後におススメのセルフストレッチをご紹介していきます。

【産後におススメのストレッチ①】

骨盤の周りの筋肉を伸ばすストレッチ

  1. 仰向けになり、足をそろえて、両膝を曲げ胸に近づけます。
  2. 両膝とかかとが床と平行になるようにしながら両腕で膝を抱えます。
  3. その際に腕の力で膝を胸の方にひきよせる、ゆっくり大きく呼吸をしながら行うとより効果的です。
  4. 骨盤まわりが伸びるのを感じながら15~20秒キープします。
  5. これを互いに2〜3回繰り返します。

【産後におススメのストレッチ②】

大殿筋を伸ばすストレッチ

  1. 仰向けになり、両足の膝を立てます。
  2. 左足の膝を傾むけ(曲げて)立てている足に乗せます。左を間に通して右の太ももの後ろを持ち引き寄せます。
  3. その際にしっかり背中を床につけて、まっすぐ伸ばしていく、足を胸、お腹が近付けるとより効果的です。
  4. お尻が伸びるのを感じながら15~20秒キープします。
  5. これを互いに2〜3回繰り返します。

【産後におススメのストレッチ③】

身体の側面を伸ばすストレッチ

  1. 左足を曲げて、右足を斜め前にだし座ります。
  2. 左手を耳の横まで伸ばし、上半身を横に倒します。
  3. その際に背中が丸まらない、ゆっくり呼吸しながら行うとより効果的です。
  4. 脇腹に伸びを感じながらを15~20秒キープします。
  5. これを左右互いに2〜3回繰り返します。

代表的な産褥体操をご紹介

産褥体操は、産後からできる軽い筋トレやストレッチです。妊娠やお産で緩んでしまった筋肉の回復を促し、血流の改善を促す目的があります。帝王切開をしている方や、産後に安静を必要としている方は、医師からの指示を待ってから産褥体操を行うようにしてください。

産後の経過日数により、行って良い産褥体操は異なります。産後の体に対して過負荷にならないように、できるものから始めていきましょう。痛みなどの不調が現れる時には、無理はせず、医師と相談しながら進めていくことをおすすめします。今回は、産後すぐにできる代表的な産褥体操をご紹介します。

産後1〜2日目の産褥体操

腹式呼吸

腹式呼吸は、産後に緊張状態となっている体をリラックスさせる目的や、軽い腹筋運動として用いられるものです。息を吐く最後に、お腹周りの筋肉を使用します。寝たままできる体操なので、産後に動けない時に有効です。

  1. 仰向けに寝ます。
  2. 大きく息を吸って、口から大きく吐きます。
  3. 最後まで息を吐き切ることが大切です。

※お腹など、痛みが出る場合には無理はしないでください。息を吸った時にお腹が膨らみ、息を吐く時にお腹が凹むようにすると良いです。

足首の運動

足首の運動は、ふくらはぎの筋肉を縮めたり伸ばしたりすることができるため、足の血流の改善につながります。あまり積極的に動けない出産直後だからこそ、行う必要がある運動です。

  1. 仰向けのまま足首を上下に動かします。
  2. 複数回繰り返し足の血流を良くします。
  3. 足がつりやすい方もいますので、できる範囲で少しずつ行います。

産後3〜4目の産褥体操

産後1〜2日目と比べて少しずつ動く量が増えてきます。できる範囲で行っていきましょう。

アキレス腱伸ばし

  1. 立った姿勢で壁や椅子などを持ち、足を前後に大きく拡げます。
  2. 後ろになっている足は膝をしっかりと伸ばして、ふくらはぎを伸ばしていきます。

この時、反動は付けないように、じっくりと伸ばしてください。

  1. 左右交互に行います。

腹筋運動

腹筋を使う運動です。腕も同時に使うため、肩周りの筋肉もほぐせる可能性があります。腹直筋離開がある人は、医師に確認してから行うようにしてください。

  1. 仰向けに寝て両膝を立てます。
  2. お腹を下にさするようにお腹〜膝に向けて腕を伸ばします。
    この時に、頭を持ち上げて腹筋に少し力を入れます。
  3. 頭を下ろしながら、手は天井に向けるように持ち上げていきます。
  4. 上記の運動を10回目安に繰り返します。

骨盤運動

骨盤を動かしていく運動です。腰の反り返りがなくなるようにすることがポイントです。

  1. 仰向けに寝て、両膝を立てます。
  2. 尾骶骨を持ち上げるように骨盤を動かします。
  3. この時、腰の反り返りが無くなるように背中で床を押すようにします。
  4. 上記の動きを繰り返します。

今回ご紹介した体操以外にも、様々な産褥体操があります。もっと詳しく知りたい方は、助産師さんに聞いてみましょう。

産後のストレッチで注意することは

ストレッチの強さ

ストレッチの強さは、痛みを感じるギリギリくらいでも効果があるとされています。そのため、強くストレッチを行う必要はありません。早く妊娠前の体に戻したくて、強いストレッチを我慢して続けるということは、あまり効果的なことではありません。ゆっくりとストレッチをしていきます。

妊娠中に安静を強いられた人の場合

切迫早産の危険性を指摘されて、安静を余儀なくされた場合、全身的に体力が落ちている可能性が非常に高いです。筋力が落ちてしまっていたり、筋肉の短縮があったり、関節が硬くなっていたりする可能性もあります。そのため、ストレッチ開始時は、無理をしないで少しずつ体を動かすようにしてください。

しっかりと体を回復させて、ストレッチで腰痛軽減へ

今回の記事では、産後に生じる体調不良について解説してきました。急激に体と生活環境の変化が起きる産褥期は、家族の支えが不可欠です。この時期は、出産で体がボロボロになっているため、しっかりと休息をする必要があります。また、妊娠中につわりが酷く動けない状態が続いていた方や、切迫早産のリスクが高く安静が必要だった方などは、さらに体力が低下していると思われます。体の状態や筋力が元に戻っていなくても、赤ちゃんのお世話をしなければならないため、どうしても腰痛はつきものです。今回ご紹介したストレッチで、少しでも腰痛を軽減できれば幸いです。

また、産後のうつ症状が気になる人は、子育て支援センターなどに相談をして、一人で悩みを抱え込まないことが必要です。家族の支援が受けにくかったり、相談できる人がいなかったりする場合は、利用を検討してみましょう。


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自分ではなかなか正確に行うことが難しいストレッチですが、確かな技術と知識を持ったトレーナーにストレッチをしてもらうのもよいのではないでしょうか。

参考文献

出産前後の性ホルモン変化と「産後うつ」との関連を解明

https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/01/press20210119-01-sango.html

布施陽子、出産と理学療法、PTジャーナル{第47巻第10号}、2013、p888〜893

福岡由理、産前・産後の関わりと臨床的評価基準、PTジャーナル{第47巻第10号}、2013、p895〜900

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