妊娠中の腰痛など…体の不調に効果的なセルフストレッチ

妊娠中の腰痛など…体の不調に効果的なセルフストレッチ

妊娠中は、ホルモンバランスが通常とは異なり、お腹もどんどん大きくなってくることから、体に不調をきたす人が多いと思います。つわりが酷くて、全然動くことができないという人もいます。今回の記事では、妊娠中の体の不調の中でも、特に坐骨神経痛や腰痛、股関節、恥骨の痛みに注目して解説していきます。妊娠中というデリケートな時期だからこそ、体を大切にし、いたわってあげましょう。この記事では、自分でできるセルフストレッチも解説していますので、参考にしてください。


なぜ、妊娠中に体の不調が起こりやすいのか?

姿勢の変化

妊娠の月数が経過していくにつれて、お腹が大きくなり、乳房も発達していきます。体の前側の重量が増えていくため、重量の増加に合わせて姿勢も変化していきます。妊娠後期になってくると、お腹の重量も相当増えてきます。そのため、お腹や骨盤帯が前方に変位しやすく、その代わりに上半身が後ろに移動してしまうスウェイバックという姿勢になりやすくなります。腰の反り返りが強くなるため、坐骨神経痛や腰痛が出やすくなります。

筋肉の厚みの変化

また、姿勢以外にも変化がみられます。腰痛に関連するものでは、腹筋の厚みの変化や、大きくなる子宮によって横隔膜が圧迫され、横隔膜の位置が変化することが挙げられます。

腹筋の厚みの変化に関してですが、妊娠中に分泌されるリラキシンというホルモンの影響で、筋肉は柔らかく伸びやすい状態になります。腹直筋や腹斜筋、腹横筋の厚みを調べた研究では、妊娠月数が経過していくに伴い、筋肉が薄くなってくことがわかっています。そのため、腹筋群の機能低下が生じ、姿勢を保持することが困難になった結果、腰痛につながる事例があります。

また、大きくなる子宮の影響で、横隔膜も挙上していきます。そのため、腹腔に対する圧もかけにくくなり、さらに腰に負担がかかりやすくなると考えられます。

靭帯が緩くなる

妊娠すると分泌されるリラキシンというホルモンの影響で、骨盤周囲の靭帯が緩みやすくなります。そのため、股関節周りや恥骨周りの靭帯も緩くなってしまい、痛みが出やすい状態になります。お腹が大きくなってきて歩きにくくなっていると、股関節の前面の組織にも負担が増してきます。ホルモンの影響で靭帯が緩くなっているところに、さらに負担が増加するため、痛みが出やすくなります。

妊娠中によくある体の不調はどんなものがあるか?

坐骨神経痛

お腹が大きくなることで、その重さに対応するように、姿勢も変化していきます。具体的にはスウェイバックという姿勢になりやすく、猫背と反り腰が合わさった姿勢になりやすいとされています。反り腰になっていると、神経が圧迫される場合があります。腰の脊髄から神経が枝分かれし、神経が通るトンネルと通ります。そのトンネルを、椎間孔と呼びます。椎間孔が狭くなり、神経が挟み込まれると、足に痺れや痛みが出たり、特定の場所の感覚障害が出たりします。特に坐骨神経領域での痛みのことを、坐骨神経痛と言います。反り腰以外にも、お尻の筋肉が硬くなってしまい、神経を挟み込んで痛みが出る場合があります。

妊娠中は、腹筋の厚みが薄くなってしまったり、横隔膜の位置が上がったりしてしまい、腹圧をかけにくくなります。このことから、通常の状態よりも、さらに上半身の安定性が低下しています。妊娠前から筋力が弱かったり、姿勢が悪かったりする場合、さらに坐骨神経痛が出るリスクがあると考えられます。

腰痛

妊娠中は、お腹の重みの影響から、後ろ重心になりやすく、腹筋の機能も低下してしまうため、腰への負担がかかります。腰痛と言ってもいろいろな原因がありますが、姿勢や腹筋の機能低下の影響で腰痛が出やすくなっていることは確実です。

主に、反り腰になりやすいことから、腰回りの筋肉が硬くなってしまって痛みが出る筋性腰痛や、腰骨の関節に痛みが出る腰痛が出やすいと考えられます。

骨盤の角度の調整や腹横筋という、お腹のインナーマッスルの機能改善で痛みが軽減する例もあります。妊娠中でも、自分で骨盤の動きをコントロールしやすい人は、妊娠中の腰痛発症をしづらい傾向があるとされています。

股関節痛

妊娠後期になってくると、腰をそりかえらせて歩くため、股関節の前方に負担がかかりやすくなります。そして、ホルモンの分泌の影響で、靭帯が柔らかく伸びやすい状況になっているので、妊娠していない状況と比べると、靭帯にかかるストレスは大きくなってしまうことが考えられます。つわりなどで動ける時間が減ってしまうと、それだけ筋力が落ちてしまいます。筋力が落ちると、骨や靭帯にかかるストレスが大きくなります。これらの原因から、股関節を痛める可能性が考えられます。

恥骨痛

ホルモンの影響により靭帯が柔らかくなると、恥骨結合という部分も動きやすくなってしまいます。恥骨結合とは骨盤の一部ですが、通常の状態では、骨盤は靭帯で強固に固定されています。妊娠すると、ホルモンの影響で靭帯が柔らかくなるだけでなく、大きくなる子宮によって骨盤に圧がかかり、骨盤の結合部に負担がかかります。そのため、恥骨結合の部分にも、痛みが生じる場合があります。特に妊娠10ヶ月目くらいになってくると、子宮が下がって出産の準備に入ります。そうすると、骨盤にかかるストレスが増えるため、さらに骨盤の結合部に痛みが出る可能性が増してきます。また、赤ちゃんの位置や胎動によっても、痛みの出やすさは変わってきます。

実は妊娠中は便秘にもなりやすい

黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響

妊娠中は、中期〜後期にかけて、プロゲステロンが多い状態が続きます。プロゲステロンは、妊娠を継続していくために必要なホルモンで、妊娠中の排卵を抑制する作用があるとされています。また、プロゲステロンは皮下に水分をため込む作用があるため、便の水分が減少し、便秘になりがちになり、体は浮腫みやすくなります。

腸の圧迫

妊娠月数が経過していき、お腹が大きくなってくると、内臓を圧迫するようになってきます。腸や胃が圧迫されるため、腸の運動が妨げられてしまったり、腸自体が圧迫を受けるため、便が通りにくくなってしまったりします。

また、膀胱も圧迫されるため、頻尿になったり、腹圧性尿失禁になったりする人もいます。

運動不足

妊娠の中期〜後期になると、お腹が大きくなってくるため、動くことが大変になってきます。そのため、動く量が減り、運動不足になることで便秘になってしまう可能性があります。また、ホルモンのバランスの影響で、股関節や恥骨部などに痛みが出てしまう人もいますし、体重の増加で膝や腰に痛みが出てしまう人もいます。これらの痛みが原因で、動くことが少なくなってしまう場合もあります。

つわりの影響

つわりは、人により症状の強さは様々です。人によっては、つわりが重く食べることができなくなってしまう人もいると思います。単純に食べる量が減少してしまい、排泄物が少なくなる場合もあります。

おすすめのセルフストレッチをご紹介

ここからは妊娠中でもできるセルフストレッチをご紹介します。

【妊娠中におススメのストレッチ①】

腹斜筋を伸ばすストレッチ

  1. 椅子に座ります または立位になります。
  2. 胸を張り、両手を頭の後ろで手を組み、からだを横に倒していきます。
  3. その際に背中が丸まらない、みぞおちを中心に曲げることを意識するとより効果的です。
  4. 脇腹が伸びるのを感じながら15~20秒キープします。
  5. これを左右互いに2〜3回繰り返します。

【妊娠中におススメのストレッチ②】

腹直筋を伸ばすストレッチ

  1. 仰向けに寝て両膝を立てます。
  2. 両膝を腰幅程度に開き、つま先を正面に向け、ゆっくり腰を持ちあげ、腰から肩甲骨あたりが床から浮くようにします。
  3. 両手はまっすぐ足の方へ伸ばして手のひらは床に向けます。その際にかかとをお尻に近い位置に置くこと、膝が外側に開かないようにするより効果的です。
  4. お腹が伸びるのを感じながら15~20秒キープします。
  5. これを互いに2〜3回繰り返します。

【妊娠中におススメのストレッチ③】

大腿四頭筋を伸ばすストレッチ

  1. 横向きになります。
  2. 上になっている手で、足首の甲をもち膝をまげていきます。
  3. 臀部に近づける、体幹を曲げるとより効果的です。
  4. 前腿が伸びるのを感じながら15~20秒キープします。
  5. これを左右互いに2〜3回繰り返します。

妊娠中のストレッチで注意することは

仰向けでの運動を長時間行わないようにする(低血圧に注意)

仰向けでの運動は、大きくなったお腹が、腹部の大動脈を圧迫してしまいます。なので、長時間、仰向けでストレッチを行うことは避けるようにしましょう。腹部の大動脈を圧迫してしまうと、心臓へ戻る血液が減少してしまい、低血圧症状を引き起こす可能性があります。めまいや吐き気、冷や汗、意識が遠くなるような感覚になってきたら、左を下にして横向きに寝たり、壁などにもたれかかるようにし、腹部の大動脈の圧迫を除去する必要があります。

息を止めないで腹圧をかけすぎないようにする

ストレッチを行う時には、息を止めないで呼吸を続けるようにし、腹圧をかけすぎないように注意しましょう。過剰にお腹が張る場合には、切迫早産などの危険性もあるため、抱き枕などを用いて安静にしてください。頸管長の短さを指摘されている人は、無理にストレッチは行わないようにしてください。

妊娠中の体の不調もストレッチで楽にしよう

今回の記事では、妊娠中の体の不調についてまとめてきました。

妊娠中は、体に様々な変化が起こり、赤ちゃんを守るために母体は刻々と変化していきます。変化のスピードは意外と早く、その体の変化に母体がついていかないことも多いと思います。今回ご紹介した不調の中でも、坐骨神経痛や腰痛は、骨盤の角度によって改善する例もあります。お腹が大きくなっている状態では、仰向けになることは少し抵抗があると思いますが、家族やパートナーがいる状態で、ゆっくりと少しずつストレッチをしてみてはいかがでしょうか?ホルモンの影響で筋肉や靭帯は伸びやすい状態になっていますので、急激に強い力でストレッチをすることは控えて、軽めの負荷から少しずつ始めてみてください。ストレッチをする時には、腹圧をかけすぎずに、うまく力を逃して、お腹が張らないように注意してください。切迫早産の危険性が指摘されている人は、自分で無理をせず、産婦人科に勤務する理学療法士などの専門家を頼ってみると良いと思います。ハイリスクの妊婦さんでも、院内でストレッチが提供されている場面もあります。リラックス効果もあるので、できる範囲でストレッチを行い、体の調子を整え、元気な赤ちゃんを産めるように、出産に備えてみるのはいかがでしょうか?


ドクターストレッチでは、プロのトレーナーがマンツーマンでストレッチを行います。あなたは、ベッドに寝て脱力していればストレッチは完了します。ドクターストレッチでは、独自技術の、「コアバランスストレッチ」という技術を用いて、あなたに合わせたストレッチを100種類以上の中から適切に選び抜きストレッチしていきます。

自分ではなかなか正確に行うことが難しいストレッチですが、確かな技術と知識を持ったトレーナーにストレッチをしてもらうのもよいのではないでしょうか。

参考文献

布施陽子、出産と理学療法、PTジャーナル{第47巻第10号}、2013、p888〜893

福岡由理、産前・産後の関わりと臨床的評価基準、PTジャーナル{第47巻第10号}、2013、p895〜900

Bed Rest治療中のハイリスク妊婦に行うストレッチングの自律神経活動および気分への影響

https://ncn.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=79&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

妊娠中のクライアントのためのトレーニングガイドラインと実践のヒント 

https://www.nsca-japan.or.jp/journal/25_5_64-72.pdf

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